根室本線の代行バスに乗車する

2018.03 記

冬のある日、根室本線の新得~東鹿越間を結ぶ代行バスに乗車した。この区間は、2016年の台風被害によって甚大な被害を受け、それからずっとバス代行が行われている。

新得駅

13時34分、釧路方面からの特急を新得駅で降りる。釧路の方と比べて、この辺りは雪が多い。

しばらく駅で待っていると、駅前のロータリーに代行バスがやって来る。ふらのバスの大型バスだ。

いの一番に乗り込む。その後、ほかの客も続々と乗車してくる。

新得駅前に停車する代行バス
当時の代行バス時刻表

14時03分、11人の客を乗せて、5分遅れで発車。バスは駅前通りから国道38号線へ入り、狩勝峠へと北上していく。遅れているにもかかわらず、時速40km程度でゆっくりと走る。

この代行バスは一つ変わっているところがある。それは、ルートにある「十勝サホロリゾート」への無料送迎バスも兼ねているというところだ。狩勝峠を超える手前で横道に入り、サホロリゾートに立ち寄る。そこでは2人が下車する。

国道に戻って、峠越えの曲がりくねった道を登っていく。峠が近づき、標高が高くなってくると、左手に十勝平野の一角が見える。

そして、峠を越える。峠の西側、富良野側は標高差が激しくなく、道は比較的まっすぐだ。

14時44分、落合駅に到着。ダイヤに余裕があるようで、ここで遅れは回復。乗降する客はいない。除雪が行われていないため、ホームと線路は完全に雪に埋まっている。

落合駅周辺の集落を出て、国道に戻り、さらに西へ。これまでとは違い、スピードを上げて走る。

5分ほど走ると、南富良野町の中心地区に入り、定刻の14時57分、幾寅駅に到着。女子生徒1人が乗車する。映画「鉄道員」の舞台になった有名な駅だが、現在ここに列車が来ることはない。

幾寅駅を出た後、町の中心を抜け、鳴ることのない踏切を越え、かなやま湖南岸の道へ。

その道をしばらく走って、15時07分、終点の東鹿越駅に到着。10人が下車する。大半の乗客は新得駅から乗り通したことになる。秘境駅とも言われる東鹿越駅を目的地とする客は当然のようにおらず、降りた客はみな、駅に停まっている列車に乗り込んでいく。逆に、列車でここまで来た人が10人ほど駅前で待っていて、折り返し新得行きとなるバスに乗車する。

利用客僅少で廃止される予定だった東鹿越駅だが、代行バスの乗換駅となったことでいったんは存続することとなった。“秘境駅”がこのような形でにぎわうとは、何とも皮肉な話である。

東鹿越駅の駅舎と代行バス

さて、この区間はいつ復旧するのだろうか。その答えは「復旧することはない」なのかもしれない。なぜならば、この区間を含む根室線の新得~富良野間は、輸送密度が200人未満と著しく低く、JR北海道が言うところの「バス転換に向けた相談を開始する線区」だからだ。いまだ復旧作業には取りかかっておらず、荒れ果てた鉄路は放置されたまま。「いずれ代行バスが路線バスになる」ということもあり得ない話ではない。むしろ、それが最もあり得る話なのが、今、この区間の置かれた状況なのだ。

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